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  • 執筆者の写真CRZKNY

ワイルドアットハート (1990)

更新日:2020年10月24日

誰にでも忘れられない映画体験があるように、この90年公開のデヴィッドリンチ監督作『ワイルドアットハート』は、心にぶっ刺さりました。




リンチ作品はどの作品も、いわゆる通常の映画と比較するとだいぶバランスが狂っていることで有名ですが、この作品も当然、しっかりとバランスが狂ってます。構図のおかしい絵画を眺めるような三半規管がおかしくなる系の映画です。この作品が公開されたのはちょうどWOWOWで『ツインピークス』第1期が始まった頃で、日本でもリンチの名前がビデオ屋に行けば謎に推されていた状況は当時を知る人たちからすれば日常のような風景だったのではないでしょうか。『イレイザーヘッド』、『エレファントマン』、『ブルーベルベット』、あと『DUNE 砂の惑星』。この異常ビデオ群を当時の大して映画に興味のない、けどおすすめだから観てみようと思ってレンタルした大人たちは一体どういう心境で観てたのか。。。


『ツインピークス』第1期の役者もカメオでチョロチョロ出るということと、カンヌでパルムドール受賞というのも相まって、ビデオ屋では当然のように『ツインピークス』のコーナーに置かれてたこの作品ですが、裏ジャケの作品解説が吹き飛ぶほどのインパクトのウォレム・デフォーのストッキング強盗姿と、イイ女すぎるイザベラ・ロッセリーニの画像に衝撃を受けました。


ちなみに完全な余談ですが、この映画のせいで、私の中のハクい女=イザベラ・ロッセリーニ=金髪で眉が太い女性、と植えつけられました。ちなみに本編ではイザベラの出演時間は5分程度です。


この映画、『私の考えるロマンがすべて詰まっている』という点で、多大な影響を受けた作品です。


ロマン。この吐き気のするほど空々しい言葉が燃え尽きて灰になる前にのたうちまわった後のような、荒々しい主人公二人の行き当たりばったりな逃避行?は、曲を作る際のイマジネーションに大いに役立っています。あー、この曲の暴力的な感じはあのシーンみたいにロマンティックに、この曲の盛り上がり方はあの暴力シーンみたいにロマンティックな感じで、といった具合に、とにかく映像的暴力=ロマンという歪んだ認知を私に植えつけた作品、それが『ワイルドアットハート』。


この作品以降、私の中でのロマンティックという概念は「ワイルドアットハートみたいな映画」と同義語で使われるのですが、他に数少ない私がロマンを感じる作品としては『トゥルーロマンス』『ドライヴ』『Red White & Blue』などの、どちらかというとヴァイオレンスの比率が高い映画が同じカテゴリに入っていて「あー、ロマンティックだなー」という言葉で愛でられています。


今後はここで、この映画のような、私が今までに影響を受けた作品(好きなもの)を少しづつでも紹介していければな、と思っています。


ちなみにこの映画、(まさに絵に描いたような)アメリカ南部の(悪い意味での)イメージを頼んでもないのに私にしっかりと植えつけた作品でもあります。劇中、出てきた瞬間から悲劇の人顔のハリー・ディーン・スタントンが遭遇するバッファローハンティングは、機会があれば、いつか誰かにやってみたいなと思っています。

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