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レフン大好き!Too Old To Die Young

最終更新: 2020年10月24日


『ドライヴ』のエレベーターシーンは、人生の中でベスト3に入るロマンティックなシーン(キャリー・マリガン演じるアイリーンが直後にドン引くの込みで)。ちなみに『ワイルドアットハート』のスラッシュメタルが鳴り響く中で突如ニコラス・ケイジがプレスリーを歌い出すシーン、『Red White & Blue』でノア・タイラーがアマンダ・フラーに狂ったお願い事をするシーンがベスト3に入ってます。

ともかく、この映画が何故かカルトヒットしたのでレフンは以後も安定して作品を撮り続け禍世界を描いていくわけですが、そのレフン監督の最新作である『Too Old To Die Young』がアマプラオリジナルで10話で一つの作品、計12〜13時間の映画になっていて凄まじかったんですが、、、

当然なんですが、長すぎて誰も周りに観終わった人がいない。




『Too Old…』は1話がだいたい90~100分なので、一本の映画並です。

そして、レフン映画に慣れ親しんでいる私のような人間もちょっと驚くほどの、これぞレフン!という美しい映像美をこれでもかと引き伸ばした長回しと、え?セリフを忘れたのかな、、と心配になるほど沈黙する登場人物たち。あと唐突な暴力。おかげで視聴中ずっと、いつまた恐ろしいことが起こるんだろう、、、という緊張感を強いられっぱなしで、1話観終わった後はクタクタに。正直1話終わった段階で「もうここで終わる映画だとしても全然問題ないって」と思ってしまいました。

このドラマ仕立ての作品は、10話で1本のレフンの新作映画として作られてます。

ストーリー自体は続き物で1つの世界なんですが、1話1話が映画並みに強すぎるので、ストーリーだけ追う、とか、映像美だけ楽しむ、とかじゃなくて、12、3時間の映画を観終わってカタルシスを味わう(しかも配信なのでいつでもどこでも好きなタイミングで再生したり止めたりしながら)、というすごく新しいタイプの作品です。

そしてここが既存のドラマとの特異点なんですが、通常のドラマであれば、1つのエピソードの中で”視聴者の興味を引き飽きさせなず刺激を与え続け楽しませる”という工夫を凝らしてどうにか視聴者を留めておくことに腐心するのですが、『Too Old…』はそういった視聴者に対する媚びを微塵も見せない。。。

また、この作品は神の視点によって世界が描かれるので、一応主人公含め主要な人物たちが何人も登場するのですが、登場人物すべてが、どうかしてる人か、犯罪者か、カルトか、クズ、そしてその被害者たちしか出てこないので、まったく誰にも感情移入出来ないまま、ただそのどうかしている人たちが起こす色々を見つめ続けるという、言わば実況音声のない何処の誰のどんな内容かもわからないゲーム配信をただ眺めているような感覚(それはそれで十分面白いんですが)。

作中、何が起きているかの説明も必要最低限ですし、結局何がどうなったのかわからないまま時は流れ浮かんでは消えていく、説明過多なこの現代において圧倒的な不親切さです。

ただ、そこで起きる色々は、すべて示唆に富んでいて、啓示的でもありますし、ある種の倫理感さえ浮かび上がらせます。ただ、倫理といっても所謂人間社会の倫理ではなく、地球を俯瞰する神の理不尽にも思える倫理として、ですが(コーマック・マッカーシーの作品群を連想せずにはいられない)。

レフンの今までの作品(『ヴァルハラ・ライジング』とかも含む)に通底する「神の倫理観」を極限まで貫き通した果てに、まさに現人神が覚醒して現世に解き放たれるところで物語は終わるわけなんですが(ネタバレじゃないよね?)、なにもここまでやらなくても、、、な描写は相変わらず満載なので、極上のクライムホラーものとしても十分楽しめるところが、レフンのすごいところですね。

余談ですが、ただの汚職刑事のクライムものだと思ってうっかり観たらただのホラーだったという作品に『ハイエナ』という映画があるんですが、ただひたすら絶望みたいな映画をカジュアルにアマプラは勧めてくるんじゃない!(めちゃめちゃ面白い映画でしたが)

話を戻しまして、レフンは以前からインタビューなどで北野映画へのリスペクトも公言していましたが、まさか今作で武の初期作『3-4x10月』オマージュまでやるとは思っていなかったのでちょっと度肝抜かれました。よく考えると(考えるまでもなく、ですが)、武のカメラワーク(会話する人物のバストショットのみで進行していく、人物を追い続けたかと思うとカメラがまた逆の方向にパンしていくetc)をこれでもかとスタイリッシュに洗練させているところも好感度大です。

ものすごく説明不足な映画なので、視聴者の気合いが試される作品だとは思いますが、話の根底にあるのは「正義」という普遍的な概念なので、神話的なヒーローものとしても捉えることができる作品だと思いますし、2000年代の映画の中で群を抜いた大傑作だと思うので(配信という新しい形の視聴スタイルで考えてもだいぶヤバい)、観た方はぜひ、語り合いたいのでマジで連絡お待ちしてます。